大判例

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東京地方裁判所 平成11年(ワ)27080号 判決

原告 株式会社藤岡ゴルフ倶楽部

右代表者代表取締役 原田榮

原告 株式会社関越ハイランドゴルフクラブ

右代表者代表取締役 丸山泰広

原告 株式会社ルーデンスカントリークラブ

右代表者代表取締役 門脇武

原告 株式会社小幡郷ゴルフ倶楽部

右代表者代表取締役 代田新一

右原告四名訴訟代理人弁護士 奥野善彦

同 川瀬敏朗

被告 小田周二

主文

一  当裁判所書記官が原告らを債務者として平成一一年二月二六日に執行文を付与した被告と昭和総合開発株式会社との間の当庁平成九年(ワ)第二七六二四号預託金返還請求事件の判決正本に基づく原告らに対する強制執行はいずれもこれを許さない。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  本件につき当裁判所が平成一一年一二月六日にした強制執行停止決定(当庁平成一一年(モ)第一五八三九号)を認可する。

四  この判決は、前項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文第一、第二項と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  昭和総合開発株式会社(以下「昭和総合開発」という。)と被告の間には、当庁平成九年(ワ)第二七六二四号預託金返還請求事件について確定判決(以下「本件判決」という。)があり、本件判決は、昭和総合開発に対し、右両者間のゴルフ会員契約に基づく預託金返還債務(以下「本件債務」という。)として、一四四〇万円及びこれに対する平成九年一二月一〇日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金を被告に支払うよう命じ、かつ、訴訟費用を昭和総合開発の負担としている。

2  被告は、本件判決につき、原告らが昭和総合開発の右訴訟の口頭弁論終結日である平成一〇年七月七日より後の承継人であるとして、当裁判所書記官に原告らを債務者としで承継執行文の付与を申し立て、当裁判所書記官は、平成一一年二月二六日、本件判決正本につき、債権者を被告、債務者を各原告とする承継執行文をそれぞれ付与した。

3  よって、原告らは、右各執行文の付与された本件判決正本の執行力の排除を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び2の事実は認める。

三  抗弁

1  営業譲渡に伴う債務引受け

(一) 原告株式会社小幡郷ゴルフ倶楽部(以下「原告小幡郷」という。)は、平成一〇年八月三一日、昭和総合開発から、同社が経営していたゴルフ場「小幡郷ゴルフ倶楽部」(以下「本件ゴルフ場」という。)の営業の全部を譲り受けた(以下「本件営業譲渡」という。)。

(二) 原告小幡郷は、本件営業譲渡に際し、本件債務を重畳的に引き受けた。

2  商号続用の場合の譲受人の責任の類推適用

(一) 昭和総合開発は、平成一〇年八月三一日まで、「小幡郷ゴルフ倶楽部」の名称で本件ゴルフ場を営業していた。

(二) 被告は、本件ゴルフ場の会員であったが、被告が、本件ゴルフ場の会則に基づき、平成九年一二月一〇日に退会したことにより、昭和総合開発に本件債務である預託金返還債務が発生した。

(三) 原告小幡郷は、本件営業譲渡の際に、「小幡郷ゴルフ倶楽部」の名称の使用権を譲り受け、右名称を商号の一部として使用するとともに、本件ゴルフ場の名称としても継続して使用した。

3  法人格否認の法理

原告らは、昭和総合開発が債務の支払を免れることを目的として設立した会社であって、昭和総合開発と一体のものであるから、法人格否認の法理により、本判決につき、原告らを昭和総合開発の承継人として執行文を付与できるというべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1(営業譲渡に伴う債務引受け)について

抗弁1の事実は認める。

2  抗弁2(商号続用の場合の譲受人の責任の類推適用)について

(一) 抗弁2(一)ないし(三)の事実は認める。

(二) 商法二六条一項は、商号の続用を要件としているところ、原告小幡郷は、昭和総合開発の商号を用いておらず、また、両社の商号間には類似性も認められないから、同条項の適用はない。

(三) 仮に、商号続用の場合の譲受人の責任の類推適用がされるとしても、前記条項は、営業譲受人に営業によって生じた債務について重畳的債務引受けと同様の効果を生じさせるにすぎないが、民事執行法二三条一項三号に規定される「承継人」には、債務名義に表示された債務の重畳的債務引受人は含まれない。

3  抗弁3(法人格否認の法理)について

(一) 抗弁3は争う。

(二) 原告小幡郷と昭和総合開発は、適法な任意整理計画のもとで本件営業譲渡を行っており、詐害性もないから、法人格の濫用として実体的に法人格が否認される関係にあるものではない。

また、仮に原告小幡郷の法人格が実体法上否認されるとしても、原告小幡郷に対する執行文付与事由とはならない。

五  再抗弁(停止条件)-抗弁1(営業譲渡に伴う債務引受け)に対し

原告小幡郷と昭和総合開発は、本件債務の債務引受けにおいて、被告が次の条件に同意することを停止条件(以下「本件停止条件」という。)とするとの合意をした。

<1>  会員権をサイプレスカントリークラブと相互分割する。

<2>  預託金償還期限をさらに五年間延長する。

<3>  原告小幡郷の定める会員会則に従う。

六  再抗弁に対する認否

再抗弁の事実は認める。

七  再々抗弁

本件停止条件は、ゴルフ場経営者である原告小幡郷が会員である被告に対し、預託金償還期限の延長を強要することと同じであり、会員に対して拘束力を有しない。

八  再々抗弁に対する認否

再々抗弁は争う。

理由

一  原告らに対する承継執行文の付与について

請求原因1及び2の事実は当事者間に争いがない。

二  営業譲渡に伴う債務引受けについて

1  抗弁1(一)及び(二)の事実は当事者間に争いがない。

2  しかしながら、確定判決の既判力及び執行力が訴訟当事者ではない口頭弁論終結後の承継人に拡張される根拠は、判決の実効性確保という訴訟当事者の利益にあるが、その範囲は、手続の明確、安定を図るとともに、訴訟当事者の右利益と、承継人とされる者の判決の対象となっている権利関係を再度争う機会を得る利益とを公平の観点から調整して定められるべきであるところ、重畳的債務引受の場合においては、原債務者が依然債務を負担しているから、既判力や執行力を拡張しなければ判決が無意味に帰するということはなく、また、引受人に判決の対象となっている権利関係を再度争わせる実益が常にないとはいえない上、原債務者の債務に加えて債務引受人が新たに債務を負担しており、訴訟物たる権利義務の承継という観念にもそぐわない。したがって、口頭弁論終結後の重畳的債務引受人は、民事執行法二三条一項三号の「承継人」に当たらないというべきであり、原告小幡郷が昭和総合開発の本件債務を重畳的に引き受けたとしても本件判決につき原告小幡郷を債務者とする承継執行文を付与することはできないというべきである。

3  よって、抗弁1は理由がない。

三  商号続用の場合の譲受人の責任の類推適用について

1  抗弁2(一)ないし(三)の事実は当事者間に争いがない。

2  右事実によれば、原告小幡郷は、昭和総合開発が、「小幡郷ゴルフ倶楽部」の名称で経営していた本件ゴルフ場の営業をその名称を維持したまま譲り受けており、かつ、右ゴルフ場の名称を原告小幡郷の商号の一部として使用している。

そして、商法二六条一項が商号を続用する営業譲受人に営業譲渡人の営業上の債務について弁済義務を負わせた理由は、商号が続用される場合、営業譲渡人の債権者は、営業主の交代を認識できず、認識したとしても営業譲受人による債務引受けがあったと考え、営業譲渡人に対して債権保全の措置を講ずる機会を失するおそれが大きいため、このような債権者を保護する必要があるところにあるから、商号以外の営業上使用される名称が営業の主体を表示する機能を果たしている場合にも、同条項を類推して、かかる名称を続用した営業の譲受人に譲渡人の債務の弁済義務を認める余地がある。

3  しかしながら、商法二六条一項によって営業譲受人が負担する義務は、重畳的債務引受の場合の債務と同様であるところ、口頭弁論終結後の重畳的債務引受人が民事執行法二三条一項三号の「承継人」に当たらないことは前記二2で説示したとおりであるから、結局、商号続用の場合の営業譲受人の責任の類推適用を根拠に、本件判決につき原告小幡郷を債務者とする承継執行文を付与することはできないというべきである。

4  よって、抗弁2は理由がない。

四  法人格否認の法理について

権利関係の公権的な確定及びその迅速確実な実現を図るために手続の明確、安定を重んずる訴訟手続ないし強制執行手続においては、その手続の性格上、法人格否認の法理により、ある会社に対する判決の既判力及び執行力の範囲を、同会社と異なる法人格を有する他の会社にまで拡張することは許されない(最高裁判所昭和五三年九月一四日第一小法廷判決・裁集民一二五号五七頁)。

よって、抗弁3は理由がない。

五  以上によれば、原告らの本訴請求はいずれも理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条を、強制執行停止決定の認可及びその仮執行宣言につき民事執行法三七条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木健太 裁判官 駒田秀和 裁判官廣田泰士は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 鈴木健太)

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